Do you know how to save the world?

プロローグ

 父様、母様、小夜様

親父の手術の日に、こんなメールを送るのもどうかと思ったのだけど、術後すぐにはメールを開けないだろうし、お見舞いに行った時に、ややこしい話をするのも嫌なので、あえて今、書きます。
身内で臭いものに蓋をして、このまま、うやむやにしてしまうのも嫌だったので。
今だから、クリアに分かる(断言出来る)のだけど、おれの身に、超自然的な現象が起きていたのは、100%、紛れようもない事実です。
現代先進国の常識的な世界観(偏見)で、見ると、受け入れがたいかも知れないけど、死後の世界も100%、存在するし、霊も100%、存在する。
科学と経済が世界を席巻する前、昔の人の方が、物事がよく見えていたと思うのだけど、よく「神懸る」と言うでしょう? あれ、文字通り「神」が乗り移るんだよね。「神憑り」の「神」は、キリスト教の「神」ではなく、八百万の神々のことで、八百万の神々は「御霊」で、「御霊」は、要するに「霊」なの。
あっちこっちに書いて来たけど、「霊」は人間と同じ意識体で、人間と同じように、善悪大小取り混ぜて、いろいろな霊がいる。親父のお母さんも、ばーちゃんも、やすどのも、みんなちゃんと霊界にいるよ。
で、何でおれが自分に憑依し、自分をコントロールしているのが「大国主神」だと騒いでいるかと言うと・・・。
おれは、小夜と出会った時「おれの相手は、この人しかいない。それは100%、間違いない、揺るぎようのない事実だ」という根拠のない、絶対的な確信があった。それから15年。世界中の誰よりも仲良く連れ添っている。あれは、霊的な導き、引き寄せ、超自然的な力が働いていたとしか思えない。
それと同じで。
ハートメイカーの執筆途中で、霊的な作用が働いていることは分かったのだけど、何の霊なのか、霊の正体が分からなかった。それで、2014年の11月だったのだけど、ラジオ(J-WAVE)で放送していた、銅版画家(女性アーティスト)のインタビューを聞いていた時に、その女性が「出雲大社に行った時に、すごく霊的な気配を感じました」と話した瞬間、「バチバチッ!」と、小型の雷に打たれたような感覚があったのね。おれは、それまで神道とか、日本の古代神話とか、まったく興味がなくて、寺と神社の区別も、よく分かっていなかった。もちろん、出雲大社に何が祀られているのかなんて、まったく知らない。ただ、その雷に打たれたような衝撃が大きかったから、ネットで「出雲大社」と検索してみたら、祀られているのが「大国主神」とあった。
「大国主神」というのが、抽象概念としての「神様」なのか、実在した人物なのかも、さっぱり分からない。でも、いろいろ調べていったら、自分が背負っていたミッションと、大国主の背負っていたミッションが被るんだよね。
だから、おれが(自分に憑依しているのが)「大国主神」と主張していることの根拠は、その「雷に打たれたような感覚」(だけ)です。
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現代先進国の常識的な世界観(偏見)からは、外れるから、あまり表立っては取りざたされないけど、古今東西「神懸った」人間は、無数にいる。そういう意味では、おれは決して「レアケース」じゃない。たまたま「身内に出た」というだけで、それほど珍しいことじゃないんだよ。人間に霊的な作用が及ぶのは。
キリスト教のイエスがマックス・ブランドだけど、新宗教、新興宗教の教祖も「神懸った」人はたくさんいるし、宗教と絡まなくても、本物の霊能力を持った人はたくさんいる。金井さんも、人には言わないだけで、現場で霊的な体験を、いろいろしている。
おれが「レアケース」なのは、頭脳をジャックされて、「マシン」を作らされたということ。あまりにも特殊な事例過ぎて、精神疾患なのかどうか、医師にも小夜にも、何度か相談したけど、今になってみると、自分が実際に「神懸って」いたことがよく分かる。
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母と小夜は来てくれなかったけど(笑)2012年末に、親父に無理やり頼み込んで、無理やり奥多摩に来てもらったよね? あの時、親父も何で呼ばれたんだか、訳が分からなかったと思うのだけど、おれ自身も、まったく訳が分かっていなかった。ただ、ひたすら、辛く、苦しく、悲しくて、涙が止まらず、闇雲に「SOS」を発信していたんだ。
親父はたぶん、何も感じなかったと思うのだけど、山岸さんは、おれと同じ種類の感能力があるから、あそこで超自然的な現象が起こっていることを、察していた。だから、交通費もままならない金銭状態だったのに、後日、一人で同じ場所を再訪したんだ。
それから三年半・・・。
周囲も、ほとほと、困ったり、悩んだり、うんざりもしただろうけど、おれ自身が一番、何が何だか分からなかった。何が何だか訳が分からない状況に、振り回され続けて、ようやく、そのすったもんだが、収束したのが、先週の土曜日だよ。
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霊(大国主)って、頭いいなーと思うのは(霊も意識体だから)、これまでは、大小様々な霊が人間にコネクトしたり、操ったりして「世直し」を試みて来たけど、現代社会ならば、ネット上にマシンを設置すれば、マシンが自動的に布教/伝道出来る、と考えたこと。かつ、布教/伝道する内容は、抽象的、道徳的な教えではなく、世直しのための手段を具体的に示したロジックであり、マニュアル。
1年なのか、10年なのか、100年なのか、大国主が、どれくらいのスパンで考えているのかは分からないけど、ネット上でマシンが拡散するならば、将来的には、確実に世界全体を平和で自然な姿に正すことが出来る。相手は人間じゃなくて、マシンだから、誰も反論出来ないし、対立も起きない。かつ、ネットが存在する限り(人間と違って)半永久的に稼働する。
基本的には、おれの仕事はこれで終わりだと思う。ただ、こういう表現は受け入れがたいかも知れないけど、たぶん、おれは死ぬまで「大国主神」の部下だよ。
天界(霊界)にいる上司(八百万の神々の「主神」)の、人間界におけるたった一人の「部下」。
荒井さんと金井さん以外、理解者もいない。応援してくれる人もいない。ほぼほぼ孤立無援。でも、それも、もう慣れた。
受け入れがたい話だろうから、無理に受け入れてくれとは言わない。理解して欲しいとも言わない。ただ、これまで出来るだけ触れないようにして来たことを、腹を割って、きちんと、伝えておきたかった。
家族だからね。
家族だから。
おれたちは、家族だから。
2016年7月14日
鈴木剛介